高齢者や通院など、日常の移動に不便を感じる人を支えるため、この秋から「移送ボランティア」の活動(支え愛いの会)が始まる。
単に車で送迎するのではなく、必要に応じて付き添いを行い、安心して外出できるよう寄り添うことを特徴としている。

「私たちが担うのは、移動そのものではなく、その人の暮らしに寄り添うこと。移動の先にある“日常”を支えたいんです」と代表の須藤さんは語る。

活動のきっかけは「やれることから」

銀行を退職後、関連会社に66歳まで勤めた須藤さん。名刺を手放した途端、「自分は一体何者なのか」と大きな空白に直面した。
その空白を埋めるように書きためた短歌は、2年間で700首にのぼる。今でもノートを開けば、当時の心の揺れが一首ごとに刻まれている。

「忘れていた記憶がふと浮かび上がる。それが自分を支えてくれた」と振り返る。

やがて「新しい自分をつくり直さなければ」と思い立ち、社会福祉士の資格取得に挑んだ。企業で40年近く競争のなかで過ごした人生から、「弱者の側から世界をみる」。それをしてこそ、一人前の人生だという思いが、地域福祉へ足を踏み入れるきっかけだった。

仲間を探して声をかけた日々

学びを続けながら、話し相手ボランティアや介護補助にも取り組んだ。しかし「地域のために何かをしたい」という思いはあっても、その形はなかなか見えてこなかった。

そんな中、「この人なら」と思える相手を見つけては、一人ひとりに思いを語り、仲間に声をかけていった。
「仲間は自然に集まったわけではなく、自分が探し、スカウトしてきたんです」と笑う。

転機は、そうして出会った仲間の一人が放った「車なら運転できる」という言葉であった。その場の空気が一気に明るくなり、「そうだ、自分にできることから始めよう」と光が見えた。

移送サービスについて学びを深め、社会福祉協議会の職員に思いを手紙で託したことが、新しい縁を呼び込むきっかけとなった。その後、研修や専門家との出会い、山形市の移送サービス団体の訪問へとつながり、学びと気づきがさらに広がった。とりわけ、南部地区民生委員児童委員によるアンケート調査や周知活動への協力は、大きな励みとなったものである。こうした支えをいただきながら、課題を一つずつ乗り越えることができた。

「最初は自分が頑張らなければと力んでいた。しかし仲間と机を囲んで話し合ううちに、自然とアイデアが生まれ、互いに励まし合えることが嬉しかった。一人ではできない活動だと実感した」と語る。

外出の価値を守るということ

活動の根底にあるのは「外出の価値」への強い思いだ。
須藤さんはこう語る。

「ひとつは、買物や通院、役所での手続きなどを自分の力でできることは、自立感や自己効力感を高めます。ふたつめとして、外出によって“スカッと”した気分転換と、目的によって“わくわく”する楽しみでもある。これが人に精神的充足感をもたらし、ウェルビーイング(幸福感)につながります。
移動・外出支援を通じてこの二つを守ることは、利用される方々の尊厳を守ることにも直結すると思うんです」

「柔らかい相互扶助」をめざして

「昔の相互扶助は、村人総出で助け合う、時に強制力を伴うものでした。しかし現代では、自発的で自然な関わり合いが必要です。私たちの活動は、その入口になりたいのです」

須藤さんが掲げるのは「柔らかい相互扶助」という考え方。
利用者にも一定の費用を負担してもらい、「支える側」と「支えられる側」が互いに行き来する関係を築くことで、持続可能な仕組みを目指している。

また「地域は住民の力で変えられる」と須藤さんは強調する。
「私の1時間を差し出せば、確実に誰かの1時間を支援できる。これが100人100時間となれば、地域は確実に変わっていきます。“あの地域はお互い様で支え合っている”と語られる場所こそ、最も魅力と可能性を持った地域になるんです」

そのための基盤として、「地域づくり談話室」という語り合いの場も準備している。時間をかけながら、住民同士で自然な支え合いを育むプラットフォームに育てたいと考えている。

仲間と共に、未来へ

活動はまず寒河江市南部地区を対象にスタートする。
「外に出ることは、人間らしさを支える大切な営み。それができなくなることは、とても辛いこと。私も85歳になって動けなくなったときには、今度は地域の皆さんに支えてもらうかもしれない。だから今は支える側として関わりたいんです」

その言葉には「お互い様」という思いが込められている。

一歩踏み出せば、道がひらける

活動を共に担う仲間も募集中である。運転だけでなく、事務や調整など役割はさまざまである。
「大切なのは協調性。知恵を出し合い、みんなでつくっていく活動なんです」と須藤さん。

最後に呼びかける。
「移動・外出支援(協力員)に関心のある方は、“一歩だけ前進”して、ぜひお電話ください。」

「無我夢中でやってきましたが、形になってくると、やりたいことが次々に出てくるものですね」と須藤さんは柔らかな笑顔を見せた。
地域のために、そして自分のために。その一歩が、新しい道をひらくのである。

寒河江市社会福祉協議会 広報誌「愛さぽーと」2025.11.5号より